元集英社の松島義一先生に教えていただいたことを記します。
松島さんは文芸誌『すばる』の創刊に尽力された方で
中上健二、北方謙三、立松和平ら
多くの作家を育てた編集者です。
元々は作家を目指していました。
というか、70歳になられた今も
傑作を書こうと奮戦しておられます。
ところが、人の原稿を読む作業が膨大で
なかなか自分の作品には手が回らないのです。
浦安、佐倉などの同人誌の講師役を3つぐらいかけもち
千葉県内のあちこちのカルチャースクールで
の講師をしているうえ、新人賞の下読み原稿が
膨大に送られてきます。
それら他人の原稿を丁寧に読み
情熱を傾けて指導されます。
文芸関係の方が言うことは、
普通の文章講座で言われることとは全然違います。
もっと深いことを言います。
松島先生が作家として成功する
ためのキーワードとして言われたのは
ウソ、色気、文章力の3つでした。
小説だからウソなのです。
読後感がよければどんなウソを書いてもいいのです。
ところが、これがうまくできない。
中途半端なウソを書いてしまうのです。
そして色気。
濡れ場を書くということではなく
文章から、行間から漂う色気がないと
読者を惹き付けないのです。
その色気とはどこから出るか。
これが難しいのですが
「人間が好きだ」という作者の強い気持ちから
にじみ出るというようなことをおっしゃっていました。
絵や音楽もそうですが
どんなものも色気がないと魅力が感じられない。
人間の感性はそういう風にできているようです。
そして文章力はそれらの土台となり、
その他の作品から抜きん出る決め手となるのです。
ピアニストであれば演奏技術を
画家であれば描く技術を
極めなければならないのと同じことです。
けれども、いくら技術的にうまくても
魅力的でないものもありますよね。
それがつまり「色気に欠ける」ということなのでしょうが
どうこがどうだからと説明できません。
魅力がない、色気がないと
われわれは一言で片付けてしまいますが
説明せよと言われると
「えーと、そうですね。あの、この色がちょっとなん
でして、それで、なんというか、なんとなくですね」
といったことになってしまいます。
言葉で言い表せないところがあります。

